アポロニア21
編集長コラム2018

11月号

10月、東京都水産卸市場が築地から豊洲に移転しました。

豊洲移転により、多くの鮮魚店は仕入にかかる時間が片道20~30分増えることになり、移転を機に廃業する店も少なくありません。

小社の近くにあった「魚美津」さんもその一つ。店主の荻原さんご夫婦が作る魚ランチ弁当が、近隣のサラリーマンなどに大変人気でした。

東京都心で鮮魚店を続けるのは並大抵のことではありません。ずいぶん前から、通常の鮮魚店としての営業をやめ、築地で仕入れた新鮮な魚をフライや刺身、焼き魚、煮魚に調理して、お弁当として販売するのがメインになりました。通常の鮮魚店では仕入れないような切れ端や、規格外の小さな魚を安く買うのが、仕入れコストを抑える知恵だったそうです。

私は、なぜかご店主に刺身好きと思われていて、「今日はトビ(トビウオ)だね」など、おススメの魚が入るとうれしそうに話しかけてくださいました。逆に、おススメの刺身が売り切れてしまっていると、他に焼き魚などがあっても「今日は何もないね……」と言われました。

木曜日は魚天丼、金曜日はカレーなど、曜日ごとの特別弁当もあり、曜日感覚を取り戻す役割も。かつて本誌「他業界からのメッセージ」にもご登場いただき、江戸っ子の粋と、豊富な鮮魚知識に感じ入ったこともあります。

荻原さんが廃業を決めたのは、豊洲移転が本決まりになったころ。仕入れにかかる時間が長くなるのと、ご自身の体調を考慮したためだと伺いました。小社社員の多くが、魚美津の魚弁当に育てられてきたようなものです。これまで、健康と満腹をありがとうございました。

今回の特集テーマは歯周病のマネジメント。歯周病が主要歯科疾患となってから、医科との接点、継続管理という考え方が根付いてきました。特集では、再生治療薬や栄養療法など新しい方法も踏まえて、歯周病をメインにした医院経営の在り方を探ってみました。ご一読ください。

(水谷)
10月号

9月に入って大型台風の四国・近畿地方への上陸、北海道での烈震、さらにそれに伴う大規模停電と、大きな災害が立て続けに起きています。9月10日現在、小社では、歯科関係の被害の全容を取材中ですが、私も台風直撃の関西にいたので、被災者の一人といえるかもしれません。

このところ、自然災害の規模が大きくなっているのは、日本だけではないそうです。文明の発展や変容、衰退は、災害や疫病などを含む自然環境の影響を大きく受けるものなので、昨今の災害続発は、18世紀以来の近代社会が本質的なところで変化していくきっかけになるかもしれません。

過去の例として、古代ローマでキリスト教が広まった理由に、疫病などで人口が減少する中で、中絶を厳禁していたキリスト教徒の割合が増えていったことを挙げる学説があります。逆に、文明の変容は自然環境にも影響を与えます。ローマ帝国が滅びて農村インフラを維持できなくなると、北アフリカが急速に砂漠化していきました。

一方、日本では、地震や台風の被害を受けるたびに国土が強靭になってきたのも事実でしょう。自然災害は社会に損害を与えますが、社会が発展する機会でもあるといえるかもしれません。

今回の台風でドアが破損したり、窓ガラスが割れるなど物的被害を受けた大阪歯科大学では、喫煙所の椅子が割れたガラスの近くに落ちていたことから、一部に「喫煙所悪玉説」が浮上。「これを機会に喫煙所などなくしてしまえ!」という強硬論と、「そんなことをしても、近所のコンビニなどに迷惑を掛けるだけでは?」という慎重論があるようです。

今回の特集では、クレーム対応をさまざまな側面から取り上げました。今まで、「患者さんの権利意識が高くなってクレームが増えた」「患者さま意識が悪質クレームを生んだ」といわれてきましたが、逆に「クレーマーだろう」という思い込みによって、トラブルが拡大・複雑化することもあるように思われます。

ご協力いただきました先生方、ありがとうございました。

(水谷)
9月号

6月に新たな医療広告規制が施行されてから、編集部に問い合わせが相次いでいます。「審美歯科はWebでも標ぼうできないのか?」「口コミサイトのコメントをどうすれば合法的に載せられるか?」など、一言では説明できない内容も少なくありません。

18世紀のイギリスでは、歯科医院の広告は文字ばかりでした。小さいスペースに、やたらと小さい文字で「自分がいかに優れているか」を、なぜか「彼は……」と三人称で訴えていました。文字数を多くした理由は、当時、情報の発信地だった都会のコーヒーハウスなどで、文字の読める数少ない人が、周囲に読んで聞かせていたからだと考えられます。誰かに読んでもらうのであれば、文字数が多い方が有利です。

「万病に効く万能治療」「動脈出血もたちどころに止める特効薬」といった虚偽広告・誇大広告も、大手を振ってまかり通っていました。これらの広告に、多少なりとも規制がかかり始めたのは19世紀末。医師・歯科医師の仕事が有資格者に独占されてからだとされています。

医療広告、医薬品広告が規制されるようになっても、長らくWebサイトは広告だと見なされていなかったため、ユニークな工夫がいろいろと見られました。

ある地方都市の歯科医院では、メインテナンスでの来院を増やそうと、歯科衛生士の顔写真を活用。気になった歯科衛生士の顔写真をクリックすると全身写真がバーンとアップになり、そのまま予約できるというシステムです。周囲からは「キャバクラ歯科」と呼ばれていて、出張のたびに予約を入れる熱心なファンもいたそうです。

また、ある都内の歯科医院では、Webサイトに環境過敏症についての詳細なデータや知見を掲載した結果、そのような悩みを持つ「難しい患者さん」ばかり集まってしまっているとのこと。

今回、「安田登編集室」で、一般社団法人日本訪問歯科協会による「訪問歯科ネット」を紹介しました。この立ち上げに当たり、広告規制には非常に神経を使ったそうです。ご一読いただければ幸いです。

(水谷)
8月号

7月上旬、西日本で甚大な大雨被害が出ました。「仕事帰りにがけ崩れに見舞われた息子を助けてもらおうと、消防、警察に何度もお願いしたが対応してもらえず、十数時間後、彼が自力で帰宅するまで生きた心地がしなかった」(歯科技工士)、「クライアントの歯科医院が被災。何か手伝えることがないか協議中」(コンサルタント)などのお話が編集部にも寄せられました。

歯科医院や歯科関係者の中にも、被害を被ったケースがあると聞き及んでおります。この間、首都圏ではほとんど雨が降らず被害の実感がなかったため、被災地の先生にのんきな相談をしてしまったりと、大変失礼しました。一日も早い復興をお祈り申し上げております。

さて、当社は「ファーストサーバ」というレンタルサーバーを使っていますが、6月下旬から7月上旬にかけてトラブルが多発。メールの送受信ができなくなったほか、当社のホームページも閲覧できない状態になりました。

幸い別のメールアドレスを併用していたため、原稿や校正の送受信のほか、多くのメール連絡を、そちらに切り替えて対応させていただきました。著者や取材先、広告主の皆さまには、ご心配、ご面倒をおかけしました。ちなみに、今回の経験で、同様の事態に備え、メールアドレスを複数持っておく必要があると実感しました。

現在、ホームページがない企業はほとんどありません。長期間にわたってホームページが表示されなくなると、「あの会社はなくなったのだろうか」と思われてしまうリスクもあります。

小社では、レンタルサーバーの不具合による影響について、SNSや日本歯科新聞紙上で発信しましたが、何らかの形で、ホームページが表示されない状態であることを知らせる必要があるのではないかと思いました。

今回の特集では、「患者さんではない人々や関係職種の方と、どう関わりを築くか?」という取材をしました。その中で「民間包括」という概念を知ることができました。地方自治体により予算が組まれる地域包括ケアに比べて、事業の自由度が高くなるメリットがあります。

(水谷)
7月号

「モーセの十戒」の中に、「安息日を守れ」というものがあります。7日のうち6日は働いて、残り1日はいかなる労働(家事も含む)もしてはならないという決まりです。ユダヤ教の場合、金曜日の日没から土曜日の日没までが安息日と定められ、キリスト教の場合は日曜日が安息日に当たります。イスラム教は、ムハンマドのメッカ脱出を記念して金曜日が安息日です。

実際、ヨーロッパの古い町では、日曜日になると大抵の店が閉まってしまいます。2年に一回、ドイツ・ケルンで開催される世界最大の国際デンタルショー(IDS)も、日曜日には開催されません。

この安息日の決まりについて、旧約聖書には2つの理由が並列しています。「神が天地創造の仕事の後、7日目には休まれたから」(出エジプト記)と、「神がイスラエルの民をエジプトでの奴隷状態から救って休ませたから」(申命記)というものです。いずれにせよ、神様から命じられないと、なかなか人は休まない(休めない)ものなのかもしれません。

現在、一部で「デンタルショーを水曜日、木曜日に開催できないか」という話が持ち上がっています。出展社であるメーカーや輸入商社などの社員にとって、デンタルショーでの土日出勤が重荷になっているためです。経営層からも、「全国のデンタルショーに出展していると、代休を取れないスタッフもいる。彼らを休ませてやりたい」という声が出ています。

しかし、複数の歯科医師によると「平日開催はあり得ない」とのこと。以前は木曜休診の歯科医院が多かったものの、今では木曜定休は減っており、土日でなければ参加できない歯科医療従事者が多くなっているのです。実際、試験的に水、木で開催したデンタルショーの来場者は、通常の4分の1未満になってしまったとか。

これらは、政府の進める「働き方改革」によって、人々の労働意識が変容したことを示すものなのかもしれません。「休みを取らせる」のも経営上の課題になりつつあります。

今月の特集では、「暗黙知」を歯科に応用する取り組みを紹介しました。ご一読ください。

(水谷)
6月号

拙著『18世紀イギリスのデンティスト』(日本歯科新聞社、2010年)は、6章までは当時のイギリスのエピソードで、7章だけは現在の日本の歯科事情に言及する構成になっています。歯科医院経営誌の編集者という立場から、歴史の教訓を記しておく必要を感じたからです。

実際の歯科治療行為は、麻酔がなかったことを除けば、18世紀でも現在でも、かなり似ている点はあるものの、やはり社会環境があまりにも異なっています。18世紀のイギリスを基に21世紀の日本にヒントを与えるというのは、困難だと感じました。結果的に、7章の内容は「歯科は、従来のデンティストリーから脱却すべき」という一般論にとどまってしまった感があります。

実際、同書を日本医史学会の会誌で書評していただいた際、評者の宮武光吉先生から「18世紀のイギリスについて記述したのだから、現在のイギリスの歯科医療制度に至る成り立ちを書くべきではなかったか。ジャーナリストである著者ならば、それは可能なはずだ」とご指摘を受けました。

昨年から、縁あって大阪歯科大学で社会歯科学の授業をお手伝いさせていただくことになりました。今年は4月と5月に、同大が新たに発足させた大学院医療保健学研究科での国際保健論の授業の一部を担当させていただきました。

最初の講義内容を検討する中で、「18世紀イギリスで急速な発展を遂げた消費社会が、歯科を含めてあらゆる医療を『誰でもお金で買える商品』に変え、現在に続く公的医療制度の重要な成立条件となった」との結論を、ようやく示すことができました。今回、特集のテーマに合致していたため、大学および関係各位のご許可を得て掲載させていただくことにしました。

私にとっては、長年の宿題を提出したような気持ちです。宿題を与えてくださった宮武先生、講義の機会を与えてくださった大阪歯科大学に心より感謝申し上げます。

今回の特集では、Web広告規制といった「すぐにも対応しなければならないこと」も取り上げました。診療・経営の一助となれば幸いです。

(水谷)
5月号

「残業時間が60時間を超えると、賃金割増率が通常の25%ではなく50%となる」。香川県歯科医師会の会報『香歯月報』(2018年3月号)に、高松市の社会保険労務士・林哲也氏が寄せた解説です。これまである意味で聖域化されていた医療機関にも、働き方改革の波が押し寄せています。経営規模の小さい歯科医院で労働条件の見直しが遅れているのは事実でしょう。

林氏が提示するチェックポイントは(1)残業代を基本給に含めていないか、(2)出退勤を手書きのタイムカードだけで管理していないか、(3)出退勤時刻のデータがあるか、(4)残業代の計算を給与計算ソフトに頼っていないか、(5)週6日以上勤務させていないか。

これらに該当する場合には、多額の残業代の支払いが求められるリスクがあるため、人事労務や給与計算の専門家に相談し、早急に対処する必要があるようです。該当する歯科医院が少なくないのではないかと感じますが、いかがでしょうか。

医療機関の労働環境が一般企業よりも厳しいとされてきた背景には、恒常的な人手不足に加え、医療の社会的責任から、医療従事者が長時間労働をしても、それを許容する風土があったためだと考えられます。

先日、日本医師会の代議員会で「医師の働き方改革」が議題となりました。その際、質問する側も答弁に立つ側も、「われわれ医師は、自己研鑚に関わる仕事を労働だと考えたことはない」という共通認識(戸惑い?)を持っていることがうかがえました。

歯科医療従事者の多くも、同じ考えを持ってきたのかもしれませんが、社会の変化はどの仕事にも例外なしに訪れます。これまでの労働環境のままでは、新たな人材の雇用も難しくなると考えられ、腹を括った対策が求められるところです。

今回の特集では、11人の歯科医院経営のサポーターの方々に、「医院経営の成功とは」「成功する院長の特徴」「お勧めツール」などをご寄稿いただきました。それぞれの得意分野や立ち位置が反映され、多彩なアドバイスになっています。例によってタイトなスケジュールにもかかわらず、ご協力いただき感謝します。

(水谷)
4月号

戦後、英国で国営医療(NHS)をはじめとする福祉国家づくりが進むきっかけになったのは、戦時中のチャーチル内閣による「社会保険および関連サービス各省委員会」の設置です。ウィリアム・ベヴァレッジ委員長の名前で1942年に出された「ベヴァレッジ報告」が、その後の英国における社会保障システムの方向性を決定づけただけでなく、西欧各国の福祉国家づくりにも大きく影響を与えました。

同報告では、社会保険、社会扶助、民間保険を組み合わせた社会保障を基盤に、最低所得保障を組み合わせた制度を提案。医療については、「特殊な需要に応えるもので、保険料の支払いに関係なく提供されるべき」としています。これが、英国や北欧諸国が租税を中心とした医療給付システムになった背景にあると考えられています。

あらゆる国の公的医療制度は、「病気になると貧乏になる」という事態を予防することで、社会の安定・安寧を図るために構築されてきました。

「病気になると貧乏になる」のを防ぐには、病気を予防するのが最も効率的なのは自明であり、ベヴァレッジ報告でも「治療と予防を組み合わせた包括的な医療提供」を訴えていますが、生活習慣病対策が主軸となっている現在、どの国にも適用可能なモデルは作られていないとされています。

近年、ドイツの12歳児DMFTが急速に改善され、世界一の健康レベルになっているといわれます。この理由は、治療の給付の条件に、定期的なチェックアップ受診を強制しているからだと考えられます。

一方、日本の保険歯科医療制度では、「疾病保険なのだから予防給付はしない」という原則の下でも、重症化予防を目的とした管理への保険給付がごく早期の段階から導入されています。いずれにせよ歯科においては、ごく早期の段階からベヴァレッジ報告が目指した「包括的医療給付」への道が各国独自に開かれつつある、ということではないでしょうか。

今月号では、日本の医療政策に大きな影響を与えている医療保険制度について、医療経済・政策学者の二木立氏の考え方を掲載しました。ご一読いただければ幸いです。

(水谷)
3月号

「A型インフルエンザウイルスの標的細胞への結合は?」「全身性浮腫の診察時に圧痕を確認する部位は?」「神経鞘腫に見られるのは?」……。2月3、4日に行われた111回歯科医師国家試験の出題例です。

歯科医師国家試験、歯科大学のCBTや卒業試験の対策をサポートしている東京デンタルスクールの岡田優一郎代表によれば、「史上、最も難問が多かった歯科国試」とのことです。

現在、歯科医院数は過剰となっていますが、歯科医師数は不足傾向にあります。分院長だった女性歯科医師が結婚、出産を機に退職。その後、後任となる歯科医師を雇用できずに撤退する法人も出てきています。にもかかわらず、2014年以降、合格率が60%台という、歯科国試の極端な難関化が続いています。そして、大量のドロップアウトを社会に送り出し、厚生労働省、文部科学省、日本歯科医師会などは、彼らの「その後」を知ろうともしません。

20年ほど前、WHOのバームス歯科部長は、「歯科の疾病構造が変化し、エアタービンを用いる歯科治療の多くは不要になり、高度な外科手術を必要とする歯科疾患もやがて減少。歯科医師のほとんどは、その役割を終える」と述べました。

しかし、歯科医療への需要は決して減ることはなく、むしろ医科領域や介護領域との接点が拡大し続けています。歯科国試の問題が難しくなっているのも、医師国家試験、看護師国家試験からの出題が増えていることが原因の一つとされます。

歯科国試の問題が難しくなることと、新規参入の歯科医師数を抑制するための国試難関化とは別の話ですが、歯科学生にとっては非常に厳しい時代になっています。しかし、岡田氏によれば、「このところ低下していた歯学部人気が回復しつつある」とのこと。歯科医療の魅力が若者たちに伝わり始めているのかもしれません。

今回の特集は、日本中を襲っている人手不足に、歯科医院はどのように対処していくのかを取り上げました。大雪に見舞われた日本海側の各地では、雪下ろしの人員が足りずに大変な状況になっているようです。心よりお見舞い申し上げます。

(水谷)
2月号

以前、薬のネット通販が議論された際、多くの薬剤師が「消費者には判断する能力がないので、ニセ薬が横行してしまう」と懸念しました。薬剤師による対面販売が医薬品流通の安全性を担保しているという意見です。当時、ネット通販とニセ薬の横行が関連づけられていたことには考えさせられます。「昔からニセ薬が横行してきたアメリカでも、普通にネット通販が行われているのに」と不思議に思ったものです。

アメリカは100年以上も前から、入れ歯から拳銃まで通販で売っていた国なので、日本とは全く違う国柄ですが、日本でもニセ薬が当たり前に売買され、人々の健康や生命が脅かされていた時代があります。

室町時代に書かれた日記などの古記録類を見ると、「薬として届けられたものが実は毒薬だった」「医者に一服盛られた」といった話が頻繁に見られます。医療や薬といったものに全く信用がなかったのです。そこで一部の貴族の間では、親しい知人同士で薬種をやりとりし、医書を貸し合って書写することにしたのです。

戦国時代には全国的な流通経路が出来上がっていくとともに、医療や薬への信頼性も生まれてきました。さらに、薬種のコストも相対的に低下。江戸時代になると、都市部では医療は「お金を払えば買えるもの」へと変貌していきます。

そして、医療に払うお金は、基本的に「薬代」として扱われることになります。以来、「医療=薬」という意識を、日本人の多くが共有してきたのは事実でしょう。

最近、日本における一人当たりの医療費がアメリカ、スイスに次いで多いと指摘されるようになっていますが、主な原因は、高額な薬剤費であると考えられています。これも文化的な背景によるものなのかもしれません。

今回の特集では、「これを導入したら、こうなった」という話を現在進行形で取材させていただきました。まだ取り組みの最中のため、必ずしも「こうすればうまくいく」という成功談ではありませんが、こういう方向性もあるのかと参考にしていただければ幸いです。

(水谷)
1月号

明けましておめでとうございます。今後、人口減が進む社会では、移民の争奪戦が起こると見られています。日本の場合、現在の経済規模を維持するには年間50万人もの移民受け入れが必要との意見があります。移民政策に詳しい神奈川大学法学部教授の江口隆裕氏もその一人です。

日本には、就労目的で年間39万人もの外国人が合法的に移入していますが、その多くがワーキングホリデーや研修生で、永住者、国籍取得者が極めて少ないのが特徴です。これは、日本政府が無期限の外国人移入を厳しく制限しているためです。例えば、インドネシアやフィリピンなどから介護の研修で来ている人の滞在期限は5年までとしています。これでは、「現場のチーフレベル」を任せられるようになったら帰国、ということになってしまいます。

江口氏は、「今後、急速に人口減が進むことは確実で、それでもなお現状の経済規模を維持したいのであれば、年間50万人の外国人移入によって人口減を食い止めなければならない。外国人移入に消極的で、ただ特殊出生率だけを上げようとする政策には現実味がないかもしれない」と指摘します。

しかし、大量の外国人受け入れには課題もあります。日本は外国人との共存について、ほとんど対処してきませんでした。例えばフランスでは、国語能力や国の文化・制度を重視する態度を移入の条件にするなどの対策を取った上で、多くの移民を受け入れてきましたが、日本ではそれらの条件は設定されていません。今後、移入外国人枠をこのままの状態で拡大するとなると、「言葉が通じない」「日本の文化に理解を示さない」「法律を守る意思がない」といった困った外国人によるコミュニティーができるリスクもありますから、一定の条件を明示して移民争奪戦に“参戦”する必要があるのではないでしょうか。

今回の特集では、算命学を企業経営に生かしている中部大学教授の児玉充晴氏に、人材育成やチーム編成と算命学の関連を教えていただきました。ちなみに、今年は火に関わることが多く、芸術、学問の話題が増えるとも見られるそうです。

(水谷)