コロナ禍の第1波のころに「感染はいつまで続くと思う?」と聞かれ、「COVID-19は知らないが、14世紀の大黒死病は18世紀まで400年は続いた」と答えたところ、「そんなに脅すものではない」とたしなめられました。
ただし、大黒死病の経験は現在にも通じるところがあります。例えば、密な環境や大規模な長距離移動が感染拡大につながるというもの。教会に集まって疫病退散をお祈りしたらクラスター感染したとか、「悪い空気」を避けた人々の引っ越し先で感染が拡大したといった話です。
大黒死病の結果、ロックダウンとなったイギリスの寒村では、外からもたらされる貨幣が感染源だというので、酢で消毒して使用していたことが知られています。現在も、お金のやりとりで感染が媒介されるというので、キャッシュレス化や自動釣銭機が急速に普及しています。感染そのものは早く収束することが望まれますが、コロナ禍で得られた知見は長く引き継がれるよう願っています。
さて、昨年、小社が発行した日本医業経営コンサルタント協会編著の『386歯科医院の統計データから見える成功医院のセオリー』が、なかなかの反響です。勤務医や歯科衛生士の数、ユニット数やCT、CAD/CAMなどが、どの程度の規模だと最も経営効率が良いのか、訪問診療やインプラント、矯正など、有利な診療内容はあるのかなど、数字で「経営の本当」が分かると評判です。
同じデータでも見方によって違う結論が出ることもしばしばなので、複数の著者が同じデータから考察を加えたことで信頼性も担保しています。不安な時期こそ、データに立脚した意思決定が重要だということでしょうか。
今月と来月の特集では、スタッフ採用、人事評価、患者さんとのコミュニケーションなど、人的側面から見た歯科医院経営の話題を取り上げます。取材を通して、歯科医院の業態が急速に変化しているのを実感できました。ご一読いただければ幸いです。
(水谷)