編集長コラム 2021年3月号

コロナ禍はまだ収束していませんが、編集部では、各地の歯科医院などへの対面での取材を、十分な感染対策の上で再開しています。

咽頭がんの手術後に初めてお会いする方も多く、「しばらく会わないうちに大変だったね」と心配していただき、恐縮しています。中には「大丈夫だ。オレの方がもっとひどかったか ら……」と、病気自慢のマウンティング(?)で慰めてくださる方もいらっしゃいます。

「もっと大変な状況にある人もいる」と思うと、それだけで自分の悩みが軽く感じることもあるのは事実のようで、実際、自分だけではないと知ることは大きな慰めです。

長期入院していた際、同じ病気で後から入院してきた「新人さん」からいろいろと相談されましたが、こうした相談は何か答えを見つけるためのものではなく、「同じ状況の人が近くにいる」と思えること自体が慰めになるからだと思います。

もっとも、「オレなんか○○がんでステージ4だった」と言われて、「いや、実は私もステージ4で……」とはなかなか言い返せないもので、「病気自慢」の会話は難しいものだと感じたりしています(笑)。

以前、要介護度4の母を奈良の実家から東京に呼び寄せたことを特集記事で書いた際も、同業他社の方から「ウチなんか要介護度5の親と同居!」と介護自慢のマウンティングで慰めていただいたこともあります。

歯科業界で働いていて本当に良かったと思えるのは、皆さん、温かい人たちばかりだと感じるからです。お互い再発しないよう、合併症にならないよう、予防と早期発見を心掛けたいものです。

今月の特集は、スタッフ採用・育成から患者さんとのコミュニケーションまで含んだ、皆がハッピーになれる歯科医院づくりを提案する企画の後半です。特に、女性特有の疾患に配慮した歯科医療の試みと、「女性脳」「男性脳」を考えたコミュニケーションスキルなど、性差に着目した記事を掲載しています。これまでの歯科では見過ごされがちだった視点だと思われます。読者の皆様のご参考になれば幸いです。

(水谷)