編集長コラム 2021年7月号

私が長期入院していた時、テレビやラジオの報道バラエティー番組が毎日の生活リズムを作ってくれました。

なぜか大抵は「だから日本はダメだ」といった論調に落ち着くのですが、放射線化学療法の副作用で立っていられないほどだった時には、「桜の開花はいつ?」という話題に元気づけられました。そして、きつい論調の番組は苦痛でした。

コロナ禍になってから、「東京の感染者数が急増」「ワクチン接種の遅れが顕著」といった報道バラエティーを熱心に見ている人ほど、元気がないように思えるのは私だけでしょうか。

そうした番組の「鉄板ネタ」は「政府は何をしている!」「諸外国では〇〇だ!」という話題。安倍前首相から続く現政権のコロナ対策が後手に回り、いち早く経済復興に向かいつつある他国と差がついた、という批判が目立ちます。ちなみに2009年の新型インフルエンザの際、日本とスウェーデンの対応を比較すると、次のようなものだったようです。

 

[日本]

水際対策を徹底し、ワクチンの安定供給と合意形成のために意見聴取を進めたが、そのうち騒ぎは収まった。

[スウェーデン]

防疫は不可能と諦め、事実上放置。その間、ワクチンの確保に努め、全国民に無料接種を推進した。

 

何となく、今のコロナ対策とあまり違わないような感じがしませんか?危機において、社会はいつも同じような反応をするということではないかと思われます。

危機対応では「無駄な努力をしない」「被害を甘受する」という姿勢も必要と思われます。非現実的な「ゼロリスク信仰」が対応の遅れにつながっている可能性もあります。

日ごろから社会が培ってきた価値観や行動様式を大きく超えた危機対応には限界があります。今回のコロナ禍を教訓とするのであれば、日ごろの行動様式から見直す必要があり、それは相当の困難を伴うはずです。

今回の特集では、ハイブリッド触媒やトイレの蓋を閉めてもらうシートなど、コロナ禍で注目されるようになった身近な環境浄化のアイデアを集めました。参考になれば幸いです。

(水谷)