言い古された言葉ですが、「文明の転換点にはパンデミックがある」といわれます。壮大な文明論で知られるシカゴ大学名誉教授のウィリアム・H・マクニール氏によると、14世紀から続いた大黒死病のパンデミックが、ヨーロッパだけでなく、中央アジアのステップ地域を長期的に汚染。それまで、幾多の騎馬民族国家を生んできた場所が、無人化によって中国やロシアといった大国のフロンティアになった、と説明しています。
その後は、新大陸の諸文明、アジアの帝国などが、ヨーロッパ人によって持ち込まれた疫病によって急速に弱体化した結果、19世紀にピークを迎える帝国主義につながったとのこと。
それまで交流がなかった文明同士が接触すると、双方に同程度の感染被害が生じてもおかしくありませんが、当時のヨーロッパ人には大黒死病で鍛えられた(?)免疫力があったため、非対称的な被害になり、人口の減った地域にヨーロッパ人が「進出」したと考えられます。
現在、「新型コロナウイルスは、某国の研究機関から漏れた」など、ある種の陰謀論のような話も聞かれます。欧米人がCOVID-19を見る目は、ひょっとして「かつて自分たちを繁栄させたもの(疫病)が、今、自分たちを襲っている」という恐怖なのかもしれません。
今月号の制作中、東京オリンピックが佳境を迎えました。無観客開催のためか、意外に都内は静かですが、想定外だったはずの感染拡大中の大規模国際競技会が無事終了し、その後もパンデミックのトリガーとならないことを切に祈っています。
2カ月連続の特集「医院を元気にする働き方改革」、今月号では、スタッフのやる気を高める組織づくりの知恵を、エキスパートの方から伝授していただきました。
インタビューの中で、私自身、先代の社長からさまざまな配慮をしていただいたことを認識する機会にもなりました。ご参考になれば幸いです。
(水谷)