『日本歯科新聞』9月28日号に、加熱式タバコに関する意見広告が掲載され、一部から批判の声が上がりました。
「医療系メディアに、健康リスクのある製品やメーカーの広告を掲載すべきでない」という批判です。さまざまなご意見があろうかと思いますが、考えてみれば、歯科は生活習慣におせっかいなほど介入してきた歴史があるようです。
私は、咽頭がんの手術で口や鼻から呼吸しなくなり、解剖学的(?)に卒煙するまでは喫煙者で、禁煙運動の一部の主張に「不当な差別だ」と不満もありました。今も、そうした思いはなかなか消えません。
かと言って、「国家的禁煙運動を始めたのはナチス」と、禁煙運動をファシズムのように捉える見方には賛同しかねる部分があります。上流階級向け万能薬のように扱われたこともあるアヘンなどと異なり、タバコは前近代から、健康リスク、モラル、防火などの観点から批判され続けてきたためで、ナチス以前から「道徳的にたたかれ続ける専売品」という稀有な存在です。
歯科は、糖質制限や歯みがきなど生活習慣への介入に長い実績があり、さらに、18世紀から「歯の欠損や着色はモラルの欠如」と主張するデンティストが多かったことも知られています。
そうした「おせっかいな医療」として発展してきた経緯があることから、タバコへの批判が強いのも当然かもしれません。21世紀に入り、歯科医療が「予防管理型」へとシフトを強めた結果、いかに有効なおせっかいができるかが、医院の力量を決めるようになった面もあるでしょう。
さて、今月号のレポートで、東京医科歯科大学摂食嚥下リハビリテーション学分野で開発中の、マウスピース型人工喉頭を紹介しました。私も被験者としてクリーンルームでの実験に参加させていただき、久しぶりに「ザ·理系」な感じの体験をしました。歯科医療が各種産業と楽しくコラボできる可能性を示唆する取り組みです。ご一読いただければ幸いです。
(水谷)